2009,05,21, Thursday
株式会社ライブログ(本社:横浜市)は、既存のスキーワックスとは全く異なるコンセプトのスキーワックス補助剤(開発コード:F-MURAKAMI)の開発に着手しました。
○開発の背景 これまでのスキーワックスは主にパラフィンを主成分としていました。パラフィンはスキーの滑走面と高い親和性を持つ一方で、十分な滑走性が得られるものではありませんでした。一方、競技選手を中心として、パラフィンに有機フッ素を含有したワックス、あるいは有機フッ素そのものを利用した有機フッ素系ワックスが利用されてきていましたが、有機フッ素を含有するワックスは高い滑走性を持つものの、数百メートル滑走しただけでもその効果が落ちてきてしまうことから、主にスタート直後のスピードを得るためのスタートワックスとして利用されてきていました。また、有機フッ素系ワックスは非常に高価であること、塗布にある程度の量が必要とされること、定着させるためにはパラフィンワックスで滑走面が処理されている必要があること、さらには効果がすぐに失われてしまうことから、一般のスキーヤーがこれを利用することはほとんどありませんでした。 ○基盤技術 基盤となる素材は理化学研究所発ベンチャー企業のFLOX株式会社(本社:川崎市)において開発された新規物質です。この新規物質はカーボン・グラファイトと非常に高い親和性を持ち、かつ、有機フッ素との非常に高い親和性を持つことが可能な物質です。 ○F-MURAKAMIの概要 今回当社が開発に着手した物質は、ワックスそのものではなく、有機フッ素含有ワックスの補助剤です。F-MURAKAMIは、有機フッ素含有ワックスの最大の弱点だった持続性を格段に向上させることにより、これまでには得られなかった「長時間持続する滑走性」を実現しました。すでに雪上でのタイム計測を実施し、有機フッ素含有ワックス単独よりも高い滑走性、持続性を持つことを確認しました(図参照)。F-MURAKAMIを利用することによって、塗布する有機フッ素含有ワックスの使用量も格段に少量化することができることから、一般スキーヤーが滑走する際にも有機フッ素含有ワックスの高い滑走性を楽しむことを可能にすると思われます。 ![]() ![]() ○塗布対象 F-MURAKAMIはカーボン・グラファイトとの高い親和性を持つことから、滑走面がグラファイトソールのスキー板(滑走面が黒色のもの)、あるいはグラファイト含有パラフィンワックスを塗布したスキー板で効果が期待されます。 ○使用方法 F-MURAKAMIは水で希釈したアルコールに対して均一に溶ける性質を持っており、既存のパラフィンワックスのように高温で溶解するという手順を踏まずにスキー板に塗布することができます。ベースワックスとして利用した場合、これまでのスキーワクシングの手間を大きく省くことが可能になります。 ○開発状況 すでにスキーワールドカップ優勝経験のある選手を含め、さまざまなレベルの競技者によってテストを実施してきています。今後は滑走性テストの更なる拡充、使用方法の最適化検討などを実施し、来シーズンの商品化を目指します。 ○今後の展望 現在のスキー用具はパラフィンワックスの使用を前提として開発されています。今後、F-MURAKAMIの有用性が評価されれば、F-MURAKAMIの使用を前提とした用具開発が期待されます。滑走面のみに限らず、サイドウォールなど、これまであまり滑走性を重視しなかった部分にも開発の可能性を創出すると思われます。
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